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前立腺炎


前立腺は、男性の膀胱の下にある精子の栄養を作り出している部分です。
その前立腺が、炎症を起こしている状態を前立腺炎といいます。
炎症が起こる原因は細菌感染だけではなく、ストレスやアレルギーなどさまざまな原因が考えられます。
痛みを感じるだけではなく、尿に関わるさまざまな症状が現れます。
10代後半~あらゆる年代の男性が発症する病気です。
また、急性で起こる場合だけではなく、症状が繰り返し起こる慢性型の前立腺炎もあります。

原因

前立腺炎は、原因が細菌の場合と細菌ではない場合の2種類に分けることができます。
細菌が原因の場合は、クラミジアなどによる性感染症も考えられますが、大腸菌などの腸内細菌が原因菌の場合もあります。
尿道から細菌が侵入し、免疫力が低下していると前立腺に感染しやすくなっています。
細菌が原因ではない場合は、長時間座り続けることや、自転車やバイクなどによる前立腺への刺激などが慢性前立腺に繋がると考えられています。
この場合は症状が軽い場合もあるので、前立腺炎であることに気付いていないケースも少なくありません。

症状

前立腺の症状は原因によっても異なってきますが、尿に関する症状が現れることが特徴です。
頻尿や残尿感、尿意切迫といった症状が現れたり、排尿する際に痛みを感じることがあります。
ただし、尿道炎とは異なり、陰茎部の先端などへの痛みです。
急性細菌前立腺炎の場合は、前立腺が炎症によって腫れ上がる、高熱が出るといった症状がみられることがあります。
一方で、慢性前立腺炎では陰茎部への不快感や痛み、射精痛などが症状として現れます。
しかし、場合によっては前立腺の症状が出ないようなケースもあります。

検査および診断

前立腺炎では問診によって症状を確認した後、前立腺の診察と検査を行います。
診察では、直腸診と呼ばれる肛門から指を入れて前立腺の状態を確認する診察が行われます。
ただし、急性細菌性前立腺炎が疑われる場合には前立腺を強く刺激しないように、CT検査や腹部超音波検査などの画像検査を行います。
そして、検査は尿検査によって白血球の量と細菌の存在を確認します。
当院の泌尿器科は銀座や東銀座にお勤めの方が通いやすい位置にありますので、お仕事帰りや仕事中でも検査していただけます。

治療

前立腺炎の治療は原因によって異なり、細菌が原因であれば抗生物質を処方いたします。
一般的には2週間前後で症状は改善しますが、症状がなかなか改善せずに長期化するようなケースもあります。
また、改善しても再発するようなケースもあるので日常から気を付ける必要があります。
性感染症の場合にはパートナーも一緒に検査・治療を行うように勧めてください。
細菌が原因ではない場合には、急性期に抗菌剤を用いることもありますが、生活習慣の見直しなども大切です。
長時間座り続けるデスクワークや運転の場合には、こまめに席を立つようにするなどしましょう。

慢性前立腺炎の治療

慢性前立腺炎の場合、先にもお伝えしたように原因特定が困難であることから、治療方法が確立されていません。
対症療法として、薬物治療と生活習慣改善にて治療を行います。
生活習慣の改善としては、疲れやストレスを溜めないようにすること、飲酒・喫煙を避けることに加え、長時間のデスクワークの仕事の時には1時間から2時間に1度程度離席してストレッチをしたり、長時間車や自転車、バイクに乗らないよう心掛ける等が挙げられます。
また、下半身を温めたり、適度な運動を取り入れることも治療の一環です。
薬物治療に関しては、下記が使用されます。

抗生物質

慢性前立腺炎の治療で投与されることが多いです。
レボフロキサシン、テトラサイクリンが有効とされており、海外では6週間以上の投与が推奨されています。

痛み止め

慢性前立腺炎は疼痛により、QOL低下を招く患者もいます。
そこで痛み止めを処方します。
鎮痛剤の一つ、NSAIDSが有効とされていますが、痛み止めに関しては治療ではなく、あくまでも投薬時の痛みの軽減になるため、服用を停止すると症状が再燃するとの指摘があります。

α1ブロッカー

前立腺肥大症の治療薬として用いられます。
排尿をスムーズにする効果が見込めることから、服用することで尿の前立腺への進出を阻害し、排尿時の痛みを緩和します。

植物由来成分配合薬

セルニルトンやエブピロスタットなどの植物由来成分配合薬も使用されます。
これらは炎症緩和の効果が見込めることから、前立腺の炎症軽減・緩和の目的で投与されます。

プレガバリン

神経性疼痛の治療薬として知られていますが、慢性前立腺炎でも疼痛を伴う患者がいることから、治療に用いられることがあります。
ただし、有効性を示すデータがまだまだ少ないです。

漢方薬

血流改善、抗炎症作用をもたらす漢方薬を処方するケースもあります。
主に桂枝茯苓丸、桂枝加竜骨牡蛎湯、牛車腎気丸、柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸が用いられることが多いです。

抗うつ薬

三環系抗うつ薬が疼痛を改善させるケースがあります。
ただし、疼痛が神経性の場合に有効とされています。
慢性前立腺炎は原因が特定されていないことから、多角的なアプローチが行われている一環です。

治療の注意点

前立腺炎の治療は、長期的になってしまうケースもあります。
思うような効果が出ないと、治療を投げ出してしまうこともありますが、治療には継続性が大切です。
治療効果があらわれないと、治療そのものに不信感を抱いてしまいがちですが、前立腺炎の診断が難しいことから治療も確たるものがなく、時間がかかってしまいがちです。
前立腺炎と向き合うためには、まずは前立腺炎のこのような特徴を把握しておくことも大切です。

種類

前立腺炎はいくつかの種類に分類できます。
種類によって微妙に症状や治療法が異なります。

カテゴリーI:急性細菌性前立腺炎

尿路感染症の一種です。
38度以上の発熱、寒気、倦怠感や全身の筋肉痛等の症状がみられます。
また、前立腺が腫れていることから頻尿となる一方で排尿時に痛みを伴うことから、排尿行為そのものが億劫になります。
基本的な治療は抗生物質を用います。

カテゴリーII:慢性細菌性前立腺炎

細菌性前立腺炎を繰り返す状態や、完治に至らずに前立腺炎が慢性化してしまう状態がこちらに分類されます。
急性細菌性前立腺炎と比較すると症状は軽い傾向にあります。
こちらも治療には抗生物質を用います。

カテゴリーIII:慢性非細菌性前立腺炎

前立腺炎としてカテゴリーされていますが、前立腺だけではなく、尿道や鼠径部、太もも、下腹部、腰など前立腺とは関係ないと思われる部位に疼痛がみられます。
閉塞症状や頻尿、排尿時に痛みを伴うこともあります。
このような痛みや不快感から、仕事に集中できなくなったり、頻繁にお手洗いに足を運ばざるを得なくなったり、適切な日常生活を送ることが困難になるなど、QOLが低下してしまう患者も多くみられます。
また、症状が前立腺だけではなく広範囲に及ぶ点や、前立腺に痛みを感じるものの、前立腺に特徴的な所見がみつけられないケースも多いことから、前立腺炎だと特定することが難しい点も特徴です。
さらに、原因がよく分かっておらず、治療法が確立されていないため、医療施設・医師によって様々なアプローチでの治療が行われています。
なお、カテゴリーIIの慢性細菌性前立腺炎と合わせ、慢性前立腺炎と呼称されています。

カテゴリーIV:無症候性炎症性前立腺炎

いわゆる無症状の前立腺炎です。
患者自身は無自覚ですが、他の症状の検査を行った際や、手術中に尿の中に白血球が含まれていることが認められるなど、偶然発見されます。
医学的見地から前立腺炎に分類されていますが、症状が無いことから病気として意味のあるものではなく、治療も積極的には行われません。

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